当時、本屋さんに平積みしてあるのを見かけました。貼り絵のような(調べたら厳密には言い方が違うみたいですけど、よく分からない)、色紙で描いたような味わいのある表紙で、すっかり気になってしまいました。内容も良かった。たしかに泣けました。元は舞台作品だそうで、それも観てみたかったような気がします。
でも、うろ覚えではありますが、とにかく「感動の押し売り」感がひどかったです。帯や前書きで「4回泣けます」「感動の作品」(書いてあったかな?)とか、そんなこと言われたら、天の邪鬼な気持ちが出てきてしまうではないですか。
いや、帯は仕方ないです。そこは販売戦略というか、そういう場所なので。それが惹句として最適だと判断されたのなら、出版社のセンスがないなって思うくらいです。でも、前書きは作者の領域ですから、そこにまで帯を持ち込まなくても良かったのでは?と思いました。営業に熱心?肥大化しすぎた自我を持て余している?商業作品のはずなのに、途端にチープになる感じはなんだろう……?
あたりのことを、当時は思ったような気がしますが、なにせ何もかも記憶が遠いです。意外と、いま読んでみたら、さらっと流せるかもしれません。あぁ、そうなのねって。
作品情報
小説『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』を原作として映画化され、2018年9月21日に公開された。主演は有村架純。監督は塚原あゆ子。(ウィキペディア「コーヒーが冷めないうちに 映画」)
あらすじ
喫茶店「フニクリフニクラ」
ここには、とある席に座ると過去にタイムトラベルできるという噂がある。タイムトラベルするには、いくつかの条件と約束があり、それを守らなければ……
過去へ行くことはできても、未来を変えることはできない。それでも、過去へ行くことで、今の自分自身のこころのありようが変わる。そんな喫茶店に集う人々と、それぞれの過去へのタイムトラベルが描かれる。
好きなところ
喫茶店で、過去へ行くことのできる特別なコーヒーを淹れられる時田数さん。有村架純さん演じる数さんが、とても可愛いです。控えめで、恋愛に臆病な感じが嫌味なく表現されていて、きゅんとしました。わたしも恋に落ちてしまいそうです。
コーヒーを淹れる過程も丁寧で、おいしそうです。タイムトラベルできるのは、コーヒーを淹れてから冷めてしまうまでの間だけで、冷めてしまう前に飲み干さなくてはいけません。なので、特別なコーヒーをいれるのが耐熱ガラスのコーヒーカップなことに、なんとなくそわそわしてしまいました。すっごく分厚い陶器とか、なんなら真空断熱タンブラーとか……(世界観が崩れるからダメです)
喫茶店の常連・平井さんの妹さん(平井久美 - 松本若菜)も可愛くて、すごく気になりました。「しょうがないなぁ」ってところに、とても姉妹を感じます。逃げていても、逃げられていても、そこには確かな絆があったと信じても良いですよね。
もう取り戻すことのできない時間、大切なひと、すでに失われてしまった何か。ダメなんですよ。弱いんですよ。なにかに打ちひしがれて泣くひと。こころが動くとか、感動とは別で、一緒になって悲しくなってしまう。
タイムトラベルは、過去を変えることで未来を変えることはできないけれど、過去の捉え方を変えることで今を変えて、結果的に未来を変えることができる。でも、それは、「特別な喫茶店」の「特別な席」で「特別なコーヒー」を飲まなくても、こころのありようひとつなのかな……って思いました。