前から気になっていました。と言っても、太宰治は詳しくないのです。『走れメロス』のひとだなってくらい。あとは『富嶽百景』。でも、課題で読んでいるはずなのに、記憶が遠すぎて何も思い浮かびません。タイトルを覚えているってことは、好きだったのかなって思うけれど……それなら手許にないのは何故だろう………?
読んでいるかもしれないし、読んでいないかもしれないですが、今がわたしにとって太宰治を読むべきときなのかもしれません。
作品紹介
『人間失格 太宰治と3人の女たち』(にんげんしっかく だざいおさむとさんにんのおんなたち)とは、2019年9月13日に公開された日本映画である。監督は蜷川実花、主演は小栗旬。
概要
太宰治が死の直前に発表し遺作となった「人間失格」の誕生秘話を、太宰自身と彼を愛した3人の女たちの目線から、事実を基にしたフィクションとして初めて映画化した作品。蜷川実花の監督4作目で、2018年11月上旬にクランクイン、12月中旬にクランクアップ、2019年公開を予定した。脚本は、映画「紙の月」などを執筆した早船歌江子。R15+指定。
キャスト
感 想
おもしろかったです!
監督は、主演の方々のことが大好きなんだなって思いました。監督だけじゃなくて、脚本家のかたも、俳優陣の演技力を信頼しているというか……ものすごくチームとしてのコミュニケーションがとれている制作現場だったのかなって想像します。
120分ですが、あまり長さを感じませんでした。
小栗旬さん演じる太宰治が、とても魅力的でした。家庭があるのに恋をしてしまう、作品のために妻以外の女性と関係をもつ……だからといって不倫をしているという後ろめたさは感じていないようにみえます。望んで不倫しようと思ったわけじゃない。気づいたら恋に落ちていたんだから、仕方ないじゃないか。それ、普通にダメなやつ。でも、なんだかんだで憎めない。好きになってくれるひとを、拒めないタイプなんでしょうか。
献身的に支える妻・津島美知子(宮沢りえ)さん。ほめないけれど、夫の才能を信じています。酔って帰ってきた太宰が、ひとりごとを言うけれど相手にしてもらえないので「あ!変な虫がいる!」って騒ぐところとか(まったく子どもですか?)……それで、ちゃんと起きてきて「どこですか?」って、虫をなんとかしようとしてくれるところとか……カッコ良すぎます。太宰「あー。消えちゃった」(最初からいなかったんでしょうね……)(それにしても、「変な虫」って騒いで妻が起きてきてくれるって、もともと虫嫌いなんでしょうか?自分では対処できない???)
太田静子(沢尻エリカ)さんは、独特な考えかたの持ち主です。妻がいることを知っていながら、太宰と恋をするのを望んでいる。子どもは欲しいが、結婚は希望していない。1度の失敗で懲りているとか。パートナーシップということでしょうか? 当時としては、新しい感覚だったのではないかなって思います。
山崎富栄(二階堂ふみ)さんは、自立して生きていたはずなのに、恋によって道なき道を進んでしまったように見えました。
なんというか、妻以外のふたりは、ふたりとも怖いですよ。自分が妻になる!という強い意志があるわけではなく、それでも自分が1番に愛されたい。いやいやいや、1番は譲りましょうよ。本妻に。相手に妻子があるのは最初から明らかなんだから、つきあうにしても、人目を忍ぶのが筋でしょう? わりと迂闊で、外で妻と子どもに見つかってしまうとか……
.....( ・θ・) <ネタバレ!🍒
雪の降るなかで、太宰が倒れて、雪に埋もれかかる場面が好きです。雪と一緒に、天から白い花が降ってきて、太宰を包んでいってしまう。お花に埋もれるって、なんだか死を連想させますね。棺桶のなか……というか。でも、駆けつけた富栄に声をかけられたときには、すでにお花はなくなっていて、幻覚だったのかな。ずいぶんリアルな……
それから、没頭して作品を書き上げているときに、襖とか障子とか原稿とか、太宰の周りを構築しているものが飛んでいってしまいます。そして、水の映像が入って、場面が変わると部屋の様子は再構築されていて、でも、そこに太宰はいません。残されたのは、書き上がった原稿と妻に宛てた遺書。「お前を誰よりも愛してゐました」
やめよう。今度にしよう。生きている間は傍にいるから、生きている間は生きていよう。って感じで引き留めたのに、止めることはできなかったんですね。(押しに弱いの?) なんだか冒頭の場面とリンクするというか、今度は自分が引きずられてしまう側というか。富栄は一途で可愛いですけど、その想いが強すぎて、自分自身も愛するひとのことも滅ぼしてしまったんですね。
最後の最後で、水に漂っていた小栗太宰が目を開けるところ好きです!